日本経済新聞 電子版

2023年04月17日

任天堂創業家、東洋建設に株主提案 取締役9人選任要求

YFOは東洋建設の定時株主総会で、吉田氏らを取締役候補として擁立する

任天堂創業家の資産運用会社は17日、東洋建設の6月予定の定時株主総会で取締役選任の株主提案をすると発表した。社外取締役だけでなく、業務執行にあたる取締役を含めて9人の選任を求める。資産運用会社は2022年から東洋建の買収を計画している。東洋建の取締役会は買収に同意せず、TOB(株式公開買い付け)は先送りになっている。総会で取締役の大半を入れ替え、TOBの是非を改めて判断してもらう狙いだ。

東洋建の発行済み株式の27%を保有する「ヤマウチ・ナンバーテン・ファミリー・オフィス(YFO)」が、17日付で株主提案についての書類を送った。株主提案で社外取締役だけでなく社内取締役の候補として外部人材を提案するのは珍しい。業務執行にあたる人材まで提案することで、買収に対する本気度を示す。

9人のうち、社内取締役候補には三菱商事の代表取締役常務執行役員や日本電産専務執行役員を務めた吉田真也氏と準大手ゼネコンのフジタで建築副本部長を務めた登坂章氏を候補とした。

社外取締役としてはJパワー元副社長の内山正人氏、ガバナンス(企業統治)に詳しい弁護士の山口利昭氏ら7人を候補とする。このほかに、監査役の候補者を1人提案する。

YFOは22年5月に東洋建に1株1000円でのTOBによる非公開化を正式提案したが、買い付けの前提とする同社取締役会の同意が得られず、実施できずにいる。23年1月には東洋建がTOB提案を真摯に検討していないとして、6月の定時総会で武沢恭司社長と藪下貴弘代表取締役、佐藤護取締役の3人の取締役選任に反対する方針を掲げていた。

YFOはTOB提案を真摯に検討しなかったとして問題視、ガバナンス上の問題を調べるための調査者選任を求めて臨時株主総会の招集も請求している。一方で東洋建はYFOの要求は株主権の乱用と主張し臨時株主総会の招集を拒否、両者の対立は深まっている。

今後は東洋建が株主提案の候補者を一定程度受け入れるのか、それとも全候補者に反対し全面対決するのかが焦点となる。